4代目・MS60系 エレガンツ・クラウン誕生



いつかはクラウンであったが、私の最初のマイカーはクラウンだった。理由は簡単、アルバイトしていた中古車屋で一番安い8年落ち(47年式)、それもクラウンとしては不便な2ドアHT、色はメタリックの青。中古車センターの一番奥の目立たない場所に32万円で置かれていた。大学1年の冬ぐらいだったか。社長からバイト代を受け取るときにクルマを買いたいと切り出した。「おー、買ってくれるか。嬉しいねえ。どれにするか??」といわれて「奥にあるクラウン」「いいよ、いいよ」、「社長、ちょっとまけて欲しいいのだけど」「もちろん大サービスするよ」「じゃあこれまでのバイト代19万円で」「うーん、まあバイトを頑張ってくれたからいいかあ、19万円にするよ」と社長はデスクで見積書を書き始める。「できたよ、これでどうだ」と見積書を私に見せる。本体19万円登録諸費用が16万円で合計35万円だった。
「社長、違うんです、全部で19万円」と言うとニコニコの社長の顔が厳しい顔に。「それじゃあクラウンは3万円じゃないか、それは無理だよ」
そこで勝手知ったるバイトの強みである。「社長、私は半年以上ここでバイトしていますがあのクラウンの見積もりを出したことはない、さらに1年ぐらい売れないままあそこに置いてあるだけでお店の損になるでしょう。このさいなくなって売れるクルマを置いたほうが得策かと」と何ヶ月も考えた内容で必死に説得。「ちょっと考えさせてくれ」とその日の勤務が終わる。翌日出勤すると社長に呼ばれる。「君に負けたよ。20万円でなんとかならないか」と言う。一万円分を別のサービスにするという約束で商談成立。10日後に私のクルマになった。
納車翌日、エンジンがかからない。工場長に来てもらって整備工場へ。ソレックスツインキャブの扱い方が難しいことを教えてもらう。さらに機械式のオートチョークがうまく作動しないようでエアクリーナーの下にあるオートチョークのロッドを手探りでオンオフできるように教えてもらう。スターターを回すときに少しアクセルを踏み気味に、ただしちょっとでも踏みすぎるとソレックスが吸い込みすぎてプラグがかぶって数時間はかからなくなる。一度動かしたあとエンジンを止めて、その後エンジンをかけるとき、こういうときは手動でオートチョークを、、、この時代のソレックスやウェーバーを知っている人ならわかるが、エンジンをかけるのは儀式に近かった。
その後、水戸街道の信号待ちでスタート時にエンスト、再始動ができなくて後ろからクラクションの嵐、工場長に聞いたようにボンネットを開けてオートチョークのロッドをいじって、、エンジンがかかった。
その1週間後、なんでもない住宅地の道路でエンスト、どうしてもエンジンがかからず格闘の末、セルモーターが弱くなった。工場長に電話して引き取ってもらうことに。
ところがである。その後2年間、車検時期になるまで故障無しで走ってくれた。M型6気筒はハイオクで6から8km/l、サスがヘタってシャコタン、クラウンなのでボディはしっかりしているしトランクもでかい、いいも悪いも19歳20歳を過ごした相棒だった。スキーに行ったときもマイナス10度の朝に一発でエンジンがかかったときは感動した。
車検直前、我が家で次のクルマを父親が買うことに、父親が以前から乗っていたマツダシャンテは慰留、クラウンを廃棄することに。するとおふくろが初心者で練習に使いたいという貰い手を探してきてくれた。エンジンのかけかたを長い時間レクチャーしてもらわれていった。が、初心者にはハードルが高すぎたようだ。すぐに動かなくなり廃車になったとあとから聞いた。