学生時代に私が生涯で初めて購入したクルマだった。
クラウンとはお大尽な学生だったと誤解されそうだ。
免許取り立ての頃、近くの中古車センター、整備工場でバイト(兼クルマ修行)していた。
毎日、センターの全てのクルマを磨いてキーを挿してエンジンをかけていた。
調子が悪いと工場長に連絡して整備していた。
田舎の中小センターゆえどちらかというと低年式が多い。
何ヶ月か勤めたところでずっと売れずに残っているカスカスのクルマに的を絞る。
それがこの60系クジラクラウンである。
私が購入したのは47年式かな。すでに10年が過ぎようとしていた。
ドアの下はサビが出ていてなんともぼろっちい。
ところがハードトップの流麗なデザインとこの年式特有な丸っこいデザインが気に入った。
試乗してみるとトヨタ伝統のソレックスツインキャブのM型6気筒エンジンは感触良し。
マニュアル4速のクラッチも感触はよかった。
というわけで社長に値引き交渉。
30万円の値札に対して車検をつけて30万円で決着した。
ところがこのおんぼろクラウンのツインキャブがくせ者で設定が決まらない。
その上オートチョークが不調ときたもので何度となくエンストして道の真ん中で青くなった。
3ヶ月を過ぎた頃から調整がうまくいってキャブの特性もわかるようになり
一発でエンジンがかかるようになった。(スキー場でも!!)
50歳以上のマニアの方はご存じだと思うがツインや三連キャブエンジンで始動を失敗すると
生ガスを吸い込んでプラグがかぶって大変なことになるのである。
エンジンをかけるときは緊張する勝負のような感じだった。
ハードトップとは言ってもクラウンゆえ後席もひろくトランクも大きく(死体が3つぐらい入る)
乗り心地もよくて使いやすかった。
強いて言えば有鉛ハイオク仕様でリッター6〜7kmには閉口した。
このクルマは次の車検が迫った頃、母の免許取り立て知人が練習用にボロが欲しいというので
3000円で売ると伝えた。
相手は3万円ではないのか、と聞き返してきたので3000円だ、と答える。
喜んでもらっていったが、前述のようにこのエンジンは初心者にはきつい。
エンジンのかけ方を何度もレクチャーしたがエンコの連続で2週間ほどで廃車にしたと後から聞いた。
今となっては遠い昔話である。
(注、写真はセダン、トヨタGAZOOサイトより)
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