知床事故とブラック

昨日の段階では同業者の証言内容が直接的な原因ではないか、と書いた。
今日になって、船長のいろいろな話が出てきた。
さらにその船長の言動や会社の過去から浮かび上がったのは「ブラック」ということである。
まず船長の話、とは言っても死んでしまっている(可能性)なのでネットで調べた人が彼のSNSを見つけた。埼玉県出身で船長歴は長くないという。そして彼自身が会社をブラックと書いていた。
さらに会社はコロナ禍で多くの離職者を出していたことも。経営は更にブラックになりとにかく船を出してお金を稼げという感じだったとか。
大きな交通事故というのは必ず会社の安全に対するずさんな対応が見えてくるのである。
1985年の日航機事故は山崎豊子が小説で糾弾していた。JR尼崎事故にしてもしかりである。
会社が利益を追求するのは悪いことではないが、公共の仕事をする以上は安全を全面に出さなければこのような災害になってしまうわけで。
いつの頃からか交通機関の運転手は呼気のアルコール検査が必須となった。実は会社の経営だけではなく人材も怪しい人が少なからずいる、という社員を信頼していない証。会社は怪しい運転手は信頼できないではうまくいくわけもない。そもそも上司から信頼されないというところですでにブラックの始まりだ。
というわけで船長がアルコール検査に引っかからなかったとしても多数の人命を奪う事故は起きるのである。
後はブラックなネタが芋づる式に出てくるだろう。なぜ同業者が「波が高くなるから」と忠告したのに出港したかはおおかた想像がつく。ちなみに遊覧料金は一人8800円だそうだ。23人なら1回の遊覧で20万円の収入だ。1日2回なら40万円。安全を考えないなら美味しい商売である。美味しいからブラックな会社と経営者が出てくるわけで。

昨日、BSで戦後0年という番組を見た。いろいろな終戦直後の市民のネタをやっていたが、一番印象に残ったのは日本という国家の罪である。番組では1945年8月14日では陸海軍と政府には食料や金品や金属燃料など2年分の備蓄があったとされている。ところがGHQが入ってきたときには何もなかったという。その後日本軍や政府からポロポロと隠し資産や食料が見つかるわけだが。
日本政府がGHQを恐れずにきちんと国民に分配していれば戦後の動乱は起きなかったのでは、という推測である。もちろん軍部や政府の役人たちは横流しして自分たちの懐を暖めていた。さらにアメリカ人も支援物資を横流しすることで同様に、さらに駐留軍はすべての経費を日本政府に肩代わりさせて、と権力や政治力のある人達がこれでもかと私腹を肥やしていたという。闇市の一斉摘発で警察が奪い取った食料がその後どうなったかも定かではない。
当時の軍部は前線の兵隊の命と引き換えに私服を肥やしていたと言ったら言いすぎだろうか。でも、そのくらい当時の日本軍はブラックだったわけで。
ブラックの度合いは人の命との交換比率で決まるのだろうか。大戦中の軍部や警察などの上層部は数十万人の命と引き換えに、さらに戦後処理では1億人が700日生きるだけの食料金品を懐に入れていたわけだ。話が戻って知床の社長も数十人の命と引き換えにお金を儲けていたわけで。