昨日の月、H2SO4


深夜に撮影。
月の出は22時30分すぎである。30日月曜日16時が下弦、登ってくる頃は半月より5%欠けた状態である。

硫酸を使った傷害事件があった。
深夜のニュースキャスターがレポーターに「現場に硫酸の匂いはありますか」という発言、私はずっこけて一笑。硫酸に匂いはないのである。
中高の理科で強酸として塩酸、硫酸、硝酸を習う。化学的性質を整理しておこう。

塩酸は小学校でも習うよく知られた強酸、実は塩酸という純物質はない。塩化水素の35%の飽和溶液を濃塩酸として扱う。強い酸性ではあるがもともとが気体なのでこぼしたとしても乾いて無くなってしまう。希釈して使うぶんにはちょっとぐらいこぼしたり手についても大した問題ではない。だから中学理科でもよく使われる。家庭内ではサンポールに入っている。人体では胃液に含まれる。

硝酸は純物質が液体である。強い酸化力があるので皮膚につけると火傷をする。沸点は85度くらい。水よりも揮発しやすいが、気体は有毒である。中学以下では使わない。

硫酸は純物質が粘度がある液体で強い酸化力がある。密度が1.8もあり瓶を持つとずっしり重い。皮膚につけると火傷する。水にはよく混じるので高校以下の実験室では希釈して希硫酸として使うのだが。ポイントは沸点で330度ぐらいである。つまり常温ではほとんど揮発しない。何がいいたいかというと、毒性が低い希硫酸で実験しても衣服や皮膚についた場合、水分は少しずつ蒸発するため希硫酸は濃縮されていずれ濃硫酸になってしまう。すると強い酸化力で衣服や皮膚を黒焦げにしていくわけだ。揮発することなく酸化力が強いという性質は映画エイリアンでも描かれている。工業製品では鉛バッテリー液で使われている。昔はバッテリー液が減ると蓋を開けて足したものだがあれは蒸留水。硫酸自体は揮発しないので容器からなくなることはないのだ。
中学の理科からも硫酸の記述や実験が無くなっていった。高校でも生徒実験で硫酸を使わせるのは少ない。
しかしながら、これらの強酸は水に無限に溶解する性質ゆえ、また、形を変えて自然界や工業製品に使われていることもあり、大学の実験ではそれほど強い規制なく使っている。高校まででは教員が実験用に希釈した溶液を作っておくだろうが、大学では濃硫酸を学生に希釈させるほうが一般的だ。少量を小瓶に移して持って帰る学生を規制するシステムは多分ない。シアンのように少量でも生命に危険を及ぼすものよりは扱いやすい。犯人はそういうところで硫酸を持ち出したと考えられる。

保管は厳密なんだけどね。実験室に濃硫酸の瓶を出しっぱなしにしておけばかなり怒られるし、始末書や反省文を書くことになる。