おでん

わたしが子どもだったころの昭和の話。
貧乏だった我が家のアパートには風呂はなく500mぐらいにある銭湯に通っていた。
その銭湯の入口近くにいつも屋台のおでん屋がいた。
もちろん一度も食べたことなどなかったが、独特の香りが漂っていた。
当時はバタバタエンジンの音がする発電機などなく
おでんは薪で加熱して照明はアセチレン灯であった。
黄色く輝く炎に照らされるおでんは小宇宙のように思えた。
アセチレン灯については高校時代の化学の時間に解明された。
ところが自分が高校の化学の教員になったとき、アセチレンの授業で
このネタを話そうとしたがこの世にアセチレン灯なるものは消え物になっていた。
話がそれたが
カップ麺でも調理パンでも100円で食べられるのに、
専門店や屋台ではおでんの練り物がひとつ100円もする、高級品である。
コンビニはもう少し安いだろうが。
貧乏だった私はこの年になるまで専門店のおでんをツマミに飲んだことが無い。
一度そんな豪勢に(実は身近なことだが)飲みたいものである。
仕方が無いのでおでんの素を買ってきて自宅でグツグツやっている。
この粉末のおでんの素は値段の割になかなかの味である。
無理してコンビニへ買いに行く必要もないとも思える。
ところがたまにコンビニのおでんを食すとこれがまたいい味だしている。
奥が深い食べ物だとようやくわかってきた。