書評.繁殖.仙川 環 著.小学館

テーマはすごく良い。
ところがテーマを欲張りすぎた上、ネタが断片的で伏線を張りきれない。
☆前半の食中毒が実は金属だったとのくだりで大人と子供というのがでてくるが
最後に鍋が違うで片付けた。
カドミウムの中毒についてヒロインもとなるのだがそのまま解明無く終わった。
水草と合鴨のくだりも関連性、特に合鴨にどれだけ残留、濃縮されたかがうやむや。
☆幼稚園のモンスターペアレンツのくだりも毒物を混ぜたのかというところで後半うやむやになった。
仙川の作品は最近の話題を巧みに組み入れたテーマの作品が多い。
が、複数のテーマをうまく消化しないままはいただけない。
また、伏線を張るのなら必ず後半につなげられるようにストーリーを練った方がよい。
特に本作で被害者の親が前半猛烈なモンスターになるのだが、
後半、ヒロインと婚約者の話で盛り上がると急に態度が軟化するというのはなんとも。
普通ならマスコミや弁護士に訴えて…とこじれるのが普通だが。
中毒の本質を知っているのは主人公と医師に過ぎないわけで。
それがストーリーが進むとわかっているかのように引っ込んでしまう。
だったら親たちのくだりは説明会で終わりにすべきだろうな。
ラストも主人公の逮捕劇を省略してハッピーエンド風に終わらせるのもおかしい。
婚約者が逮捕されてハッピーにはならないだろう。