自衛隊は中国の偵察気球を高度1万8000mで撃墜できるか?

気球について解説したい。
水素やヘリウムを入れた気球、風船は空気に対する浮力で上昇する。
安い風船は風に流されながら上昇していく、とそのあとどうなるか。
高度が上がると気圧が下がる、すると風船の中の圧力は相対的に大きくなり外側に膨らもうとする圧力が生じる。すると空気を入れすぎた風船のように膨らみ続けて破裂する。
高級な風船、すなわち気球はその辺を考慮されて設計される。破裂を防ぐには頑丈に作るのではない。膨らもうとする圧力に適度にあわせる。つまり上空に行くほど膨らむのである。
ここ数日の気球の大きさに着目すると、今日撃墜されたのは大きさが小型車程度、高度は6000m。先日カナダで撃墜されたのは高度12km、大きさは10mぐらい。最初に発見されたのは高度18km、大きさは家ぐらいだったと言う。
つまりもとは同じようなもの、つくりで高度が上がるに連れて膨張していっただけである。

次に撃墜方法が面白い。
F22ラプターで高価なミサイルで撃墜したとある。たかが気球にそんなに大げさにする必要があるのか。ポイントは12km以上の高高度である。一般的なジェットエンジンの旅客機や戦闘機は成層圏の下の方、12kmぐらいが上昇の限界である。コンコルドやSR71などの特殊な航空機は20kmまでの上昇が可能。SR71はロケットエンジンのようなシステムを持ち30kmまで上昇が可能。つまり成層圏の上まで上がろうとすればそれなりの高性能なエンジンを積んだ戦闘機が必要、現在の米軍ではラプターぐらいなのか。自衛隊のF15では15kmまで行けるかどうか。

たかが気球を落とすのにミサイルが必要なのか。
戦闘機には20mmの機銃がある。ネットニュースでこんな記事があった。
1998年8月カナダで起きたことだ。オゾンを測定するために飛ばした気象気球が故障して制御を失ったためカナダ政府は撃墜を決めた。カナダ空軍の戦闘機CF-18「ホーネット」2機が20ミリ機関砲1000発以上撃ったが気球は飛行を続けた。もちろん穴が空いてヘリウムが少しずつ抜けはしたが気球は大西洋を渡って英国を通過し、アイスランドまで飛んで行った。当時カナダ国防省は気球は25階建て建物と同じ大きさだったが照準を合わせるのが難しかったと発表した。戦闘機は通常、高度15キロまで上昇できるが、気球は18キロ上空にあったためだ。

1945年当時、日本軍は和紙で作った気球でアメリカ本土に風船爆弾攻撃をしたそうだ。当時の日本軍の愚かさを表す笑い話なのだけど、実はこの思想が今もあるということだ。科学的には今回の気球事案のように可能なのである。