北杜夫、どくとるマンボウ

私が中学生の時、洋楽に夢中で遊んでばかり。
学校でも落ち着きがなく、どうしようもないガキだった。
ほぼ毎日のように職員室に呼び出され説教、廊下に立たされ、居残りさせられ。
そんな私を説教するでもなくやさしく接してくれたのが当時の担任だった。
「この本を読んでみなさい、あげるから」と渡されたのがどくとるマンボウ航海記だった。
楽しく読むことができて、先生にお礼と感想を言うと日曜日に実家に来いという。
大きな納屋、物置の奥に茶箱が積んであり本がぎっしり入っている。
その中の一つが北杜夫の箱だった。
先生がおすきだったのであろう。
全部くれるというので自転車で何往復もしてほとんど頂いた。
その本は捨てずに今でも私の書棚に入っている宝物だ。
お陰でぐれなかった、などとは言わないが考えや生き方の参考書になった。
今でものらりくらりと生きているのはどくとるマンボウ航海記のせいなのか。
私にとっても偉大な作家であった。