トヨタとホンダが数年後に実用的な価格で発売するというニュース。
排気ガスは水だけ、と夢の技術をうたっている。
果たしてそんなに素晴らしいのか。
その燃料は水素である。
宇宙ロケットにも使われる燃料である。
短所として持ち運びがしにくいことが挙げられている。
私はこれをまやかし、隠れ蓑と思っている。
水素は確かに軽い気体で燃えやすい。
昭和初期のヒンデンブルク号爆発事故が代表的。
理科の実験でも水素はポンと燃えるとある。
その上分子量が小さいから沸点も低く液体にするのも大変だ。
でもそれは技術でなんとかなる。
隠れ蓑にしている本体は水素の調達である。
水素など海にたくさんあるではないか、というが
理科の実験でわかるように電気を使って電気分解で水素を作る。
つまり水素を得るのにエネルギーをお先に使っている。
だったら路面電車みたいに道路に架線を張ってパンタグラフで給電した方が
水素を間に使うより高効率で安全だ。
家庭用などで実用化されているのは都市ガス、天然ガスを使う方法。
メタンCH4のHを取り出すらしいのだけど、お気づきのようにすでに化石燃料を使う。
さらに、(ここからは化学の授業)
水素が燃えると水になる。この時にエネルギーが出る。
つまり、水素の状態の方が水の状態よりエネルギーが高い状態ということ。
水や二酸化炭素は完全に酸化された状態、すなわちエネルギーは極めて低い状態だ。
エネルギーの低い二酸化炭素からエネルギーの高い有機化合物(グルコース)などを
合成する光合成は太陽光というエネルギーを必要とするわけだ。
つまり、化石燃料はエネルギーが高い状態だから世界中でエネルギー源として使われる。
その化石燃料から水素を作るのはわかりやすいが、ちょっと反則だ。
かと言って水から水素を作るのはエネルギーを必要とする。
つきつめていくとそれは八方ふさがり。
長い目で見れば、穀物や廃棄物を発酵させてエタノールを作るなんて話もある。
原料となる穀物は太陽エネルギーを使うわけだが、この効率は相当低い。
太陽エネルギーはトータルでは膨大だが太陽電池などでわかるように
個々に降り注ぐ量は案外少なく集めて実用的なエネルギーにするのはまだ難しい。
さらに(ここから物理の授業)
エネルギー保存則というのがある。
エネルギーは勝手に生まれたり消えたりしないのだ。
人類が持つエネルギーは化石燃料と太陽放射のみ。
さらに
水素をありがたがるのは日本に化石燃料がないという政治的理由のみ。
昭和30年代から政府主導で原子力発電が推進された経緯とよく似ている。