「のび太」という生きかた

ちょっと前にCGのドラえもんを見たばかりだった。
今さらドラえもんなんて、と小馬鹿にしていたけどなかなかどうして、面白かった。
サザエさんと一緒で安心して見ていられる面白さかな。
前半は徹底的にダメなのび太が表現されている。
ドラえもんはいちいちアイテムを出してはのび太を甘やかす。
ところが、後半になるとのび太は自分の力で頑張るという展開に。
その辺が水戸黄門同様に安心して見ていられるんだろうな。
どこでもドアでも何でも悪用しようと思えばいくらでも。
ところが、幼稚な使い方はするが誰も悪用しないのである。
善人しか出てこないのである。
子供向けのアニメであるからそれでいいのだけど。
藤子不二雄の世界でも山田洋次監督の男はつらいよの世界でも全員善人なんだよなあ。
もし、ドラえもんのアイテムをバックトゥザフィチャーのビフのような奴が現れて
悪用して世界を変えてしまうとしたら、のび太は永遠に落ちこぼれのまま。
という、私から見れば作り過ぎの漫画に対して一流の人が評論解説している。
子供でもわかる話を解説してどうする。
面白いのが、本の1/3があるストーリーを文章でなぞる。
構成上しかたがないのだろうけど、ドラえもんを文字だけで読むのはちょっと滑稽だ。
藤子不二雄の会社に著作権料金を払って、人気に便乗した感じだ。
もう一つ
のび太は極端な例だが、どんな人でものび太のような弱さを持っている。
なんていうのは、よく考えればアタリマエのことだ。
だから、多くの人がドラえもんのアイテムに共感するわけで。
のび太ドラえもんのおかげでたくましくなっていくとある。
自分のことを考えても、自分の子供のことを見ていても
よく考えればこれもアタリマエのことで、のび太だけの話ではないよね。
藤子不二雄が描きたかったのは、どんな子供ものび太であって
ドラえもんがいてもいなくてもみんな大人になっていく。
私の経験でも
知人の息子にちょいといじわるをしたらワンワン泣いてすねていた。
ところがほんの数年後、中学生になったら「そんなこともありましたっけ」と他人ごと。
そう考えると、この本の筆者は人気に便乗したいがために
ずいぶん的はずれなことを書いている。
それでもたいした批判を浴びないのは、ドラえもん人気と子供の話だからだね。