高速の渋滞、先に進むのはどちらか-内藤誼人

新書を購入して読むなどとはあまりしないのだが
(作家としては申し訳ない)珍しく購入した本である。
3月に新刊の「高速の渋滞、先に進むのはどちらか-内藤誼人著」である。
著者は心理学者。
この本は心理学の入門書として書かれているようだ。
まず、題名がよい。思わず目が止まる。
編集者のセンスが生かされている。
こうしたキャッチコピーは素人の作家が考えるより彼らに頼んだ方が良い。
私の著作『ぱそこん力をつけよう!』も担当者が会社で考えてもらったものだ。
私が考えた陳腐な題名より余程すっきりしていると思った。
さて、高速の渋滞、先に進むのはどちらか-に戻ろう。
この本の長所は、クイズ形式になっているところ。
尊敬する多湖輝先生の頭の体操形式である。
一度、自分で考えてから読み進めるため、頭に入りやすい、すなわちわかりやすい。
特に心理学や哲学などの書物はどんなに平易に書いても難しい。
クイズ形式は当たりである。
次にクイズ自体が必ずシュールなイラストがあること。
漫画世代の人達にも受け入れられやすい。
さらに、文章も平易で文字数も少なくコンパクトにまとまっている。
ページあたりの文字数も少ないのはトレンドなのか、計算なのか。
正直な感想は内容的にはつまらない。解説を読んでも多少の社会経験がある大人なら
わかっているような話ばかりである。
こんなこと…と言われるのを防ぐためほとんどのページに
「○○大学の○○教授の論文では…」と出展を明記している。
内容に自信があるのならいちいち権威付けに書かなくても良いとも思うが。
そうしなければならないほど内容は大した事はない。
しかしである。
これは書かれているクイズとその答えの解説の内容のみを評価した場合の話。
最初にも書いたし、この本のまえがきにもあとがきにも書いてあるのだが
心理学の入門書として書かれている。
クイズの答えがどうこうではなくて、そういう視点、考え方が心理学の基本である、
と言いたいらしい。
同じ形式、アプローチの前作が10万部だそうである。
もし、クイズ形式でなく、イラストを多用していなかったとしたら私の著作と
いい勝負の販売数だったろうに。
たいしたことない内容から鑑みて編集側の企画の勝利だと言わざるをえない。
たいへん勉強になった。