名探偵の呪縛 東野 圭吾

東野 圭吾が好きだ。
入門は映画「秘密」
精神が入れ替わってしまうというよくあるミステリーの
設定ではあるが、入れ替わった精神はそう簡単に元には
戻ることなくとめどなく悲しい。
「手紙」でもラストまで決してハッピーにはならない。
東野作品は劇的に立場がよくなったりしないのだ。
「ガリレオ」シリーズはTV化して話題になった。
東野の推理はガリレオのごとく科学的にきっちりつじつまが合う。
文学としてはもう少し推理に人間的な妥協があってもいいとも
思うが彼はそれを許さない。
そんな東野の推理小説に対する思いが「名探偵の呪縛」に詰まっている。
推理小説」を描いたミステリーと言うよりファンタジーに近い。
珍しくかなり単純な人間的な推理と思いきや、過去の推理小説
パロディ(パクリではない)であることに気づく。
コントに出てくるような古典的な推理小説を描いているのに
東野ワールドを忘れない筆力がすごい。
個人的にはちょっと切り口がやわらかく好きではないが。