映画「沈まぬ太陽」

私の敬愛する山崎豊子の傑作「沈まぬ太陽」の映画をようやく見た。
不毛地帯やら二つの祖国やら白い巨塔やら山崎豊子のエッセンスを
すべて注入した作品と言っても過言ではない。
その上85年の航空機事故まで題材として、あらゆる意味で映像化不可能と
私自身も勝手に思っていたし事実10年以上映像化されないことからそうだったのだろう。
ところが08年になって映画化の話を聞いたときは驚いた。
当然映画化するからと航空会社や御巣鷹山をうやむやな表現でごまかすことはできない。
余程映画館に行こうとは思っていたのだが…というわけで我が家で鑑賞となる。
冒頭の部分で御巣鷹山篇であった。
映像としてはこれを最初にしたほうが原作を読んでいない『初心者』のつかみがよいか。
それにしてもグラウンドを離発着する自衛隊ヘリや遺体安置の体育館など
実際にニュース映像になりにくかったところが新鮮だった。
さらにタブー視されていた墜落直前の機内の様子まで映像化したことは賞賛すべき。
いろいろな方面から圧力がかかったのではなかろうか。
渡辺だけでなく脇を固めた演技は退屈なシーンが全くない。
3時間を超える映画なのでつなぎのシーンは2倍速でと思っていたがそんなシーンは無かった。
音もクリアに記録されていてよかった。
強いて言えば、CGの稚拙さはなんでなのか。
多分に作為を感じる。
つまり、ストーリーの性質上本物の機体を映すことはできない。
また、リアルなCGも同じ意味になってしまう、と考えたのだろうか。
しかたがないとはいえ、非常によくできた映画だけに作為のあるCGが目についた。
CG以外は原作の素晴らしさに応えようとした映画を作ろうという気持ちが伝わる素晴らしい作品だった。
☆5つ